高齢者が施設の入所を嫌がって困っているというあなたへ。この記事は、そんな家族のために書いてみました。高齢者がなぜ施設入所を望まないのか、その心理を探ります。そして、その気持ちにどう向き合い、説得や会話を進めればいいのか、対応方法を考えてみました。また、施設に頼らず、高齢者が自宅で安心して暮らせるようなサービスの紹介もします。この記事を読むことで、あなたの悩み解決に役立つだけでなく、大切な高齢者の気持ちをより深く理解することができるはずです。
“理解しよう!高齢者が介護施設を望まない5つの心理”
高齢者が施設に入ることを嫌がることはよくあります。本人が納得し、安心して施設で生活するためには、まずその心理を理解する必要があります。
1. 自由とプライバシーの制限
自由が制限される
施設に住むと、生活のリズムや習慣が制約されることを不安に思う高齢者が多いです。自分の部屋で自由に生活したい、好きなときに寝たい・起きたいといった自由度を大切にする人にとっては、施設生活は窮屈と感じるかもしれません。
プライバシーが無くなる
知らない人と同じ部屋で生活する事に不安を感じる高齢者もいます。自分の時間やスペースが欲しい人にとっては、共同生活は大きなストレスとなることがあります。
決定権が無くなる
自分で生活の選択をする自己決定権を喪失することを恐れる高齢者もいます。施設に入所したら、自分の意志は、尊重されないのではと不安になります。
2.家族や近所とのつながりが無くなる
家族と離れる事が寂しい
自宅で家族と一緒に過ごす時間を大切にしている人にとって、施設への入所は家族との別離を意味します。特に孫との接触が減ることを嫌がる高齢者も多いです。
自宅や地域とのつながりが無くなる
自宅や地域とのつながりを大切にしている人にとって、施設への入所はこれらとのつながりを断つことを意味します。特に長年住んできた地域や家から離れることは、深い寂しさや不安を感じる原因となります。
孤独感
施設に入所すると、以前のコミュニティーや友人、近隣の人々との交流が減るため、孤独感を感じる高齢者もいます。
3.施設生活への不安と恐怖
病気や死のイメージがある
施設は病気の人や身体が弱っている人が集まる場所というイメージ持っている高齢者は多いです。そのため、そのような場所に自分が属することに抵抗を感じるのです。また、施設への入所は人生の終末をイメージしている人も多いです。
施設への不信感がある
施設のスタッフの質やサービスの不十分さを心配する高齢者もいます。そのため、適切なケアを受けられない、自分の要求が満たされないなどの不安を抱いています。
施設での生活がイメージ出来ずに不安
施設での生活は未知のものであり、その未知への不安が施設への入所を嫌がる一因となります。どのような生活になるのか、自分が楽しめるのか、他の入居者と仲良くできるのか等、具体的なイメージが持てないことから拒否反応を示すことがあります。
ネガティブな報道
メディアが報じる高齢者施設の不適切なケアや虐待の事例など、ネガティブな報道が高齢者の施設に対する不信感を増幅させることがあります。
情報不足
高齢者施設の具体的なサービスや生活内容を理解していないために、入所を拒む高齢者もいます。情報が不足していると、不安や恐怖が増大することがあります。
4.経済的な問題
入所費用がもったいない
高齢者施設の利用にはかなりの費用がかかることがあり、これが負担と感じる高齢者もいます。子供に迷惑を掛けなくない、そんな大金を自分のために使いたくないなどです。特に経済的に余裕がないと思っている人は、施設入所に抵抗感を覚えることがあります。
5.自尊心とプライド
自分への自信がある
本人は、一人で生活出来ると考えているため、一人で生活できないと認めることが出来ない高齢者もいます。そのため、自立していたいという願望から施設への入所を拒まれます。
過去に嫌な経験がある
高齢者自身やその周りの人々が施設で良くない経験をした場合、その影響で施設入所を嫌がることもあります。過去の経験がトラウマとなって、施設入所を避けているかもしれません。
“施設入居を望まない高齢者、上手に対応する5つの方法”
施設入所を受け入れられない場合には、高齢者の意志を尊重する事が大事です。また、高齢者一人ひとりの状況は異なるため、柔軟なアプローチと対話を通じて解決策を見つけることが大切です。
1.感情の理解と対話
高齢者が施設入所に抵抗感を持つのは、自分の家や習慣を離れることへの不安や、新しい環境への恐怖から来るもので、ごく普通の反応です。こうした気持ちを理解し、共感することが大切だと思います。
たとえば、「自分の家でなければ、自分の好きなテレビ番組を見ることもできないだろう」と心配しているとき、それを無視するのではなく、「テレビ番組が見られないと思うと、とても心配になるね。確かに自分の家では好きなようにテレビを見ることができるからだよね」と共感の言葉をかけます。そして、その上で、「でも、施設では各部屋にテレビがあるし、好きな番組を見ることができるよ。一緒に施設を見に行ってみるのはどうかな?」と提案するといった対話を進めます。
このように、高齢者の心の中にある懸念を明らかにし、それに対処する方法を、一緒に考えていくことが重要だと思います。
2.施設の理解とメリットを説明する
高齢者が施設入所に対する不安を感じる一つの理由は、施設生活に対する具体的なイメージがないこと、あるいは誤った情報を持っていることから来ることが多いです。例えば、「施設には自由がない」「好きな時間に寝起きできない」などと思い込んでいることがあります。
このような不安を解消するためには、まずは施設の実際の情報を詳しく提供することが重要です。具体的には、施設のパンフレットを一緒に見たり、施設見学に連れて行ったりします。施設見学では、スタッフとの面談を通じて施設の日常生活やルール、サポート体制を理解することができます。
次に、施設生活のメリットを具体的に伝えます。例えば、「施設では24時間スタッフがいるので、何か困ったことがあればすぐに助けてもらえるよ」「栄養バランスの取れた食事が毎日提供されるから、健康を維持しやすいね」などと話すといいでしょう。
また、介護保険制度を利用した場合の費用負担についても具体的に説明します。例えば、「介護保険制度を利用すれば、自己負担は一部だけ。施設のサービスをフルに利用できるよ」と伝えることで、経済的な不安を軽減することができます。
これらの情報提供と具体的な例を通じて、高齢者が施設入所をよりポジティブに捉えられるようになるでしょう。
3.段階的にステップアップしていく
急に今までの生活を変えて施設に入居するというのは、高齢者にとって大きなストレスになります。だからこそ、ゆっくりとしたペースで施設生活に慣れていくことがおすすめです。
初めのステップとして、デイサービスの利用を考えてみてください。デイサービスは、日中だけ施設に通う形のサービスです。例えば、「毎週水曜日にデイサービスに行ってみる」というように始めてみると良いでしょう。デイサービスでは、様々なレクリエーション活動やリハビリがあり、新しい人との交流の場にもなります。
次のステップでは、短期間の施設利用(ショートステイ)が良いと思います。これは、数日から数週間、施設で過ごしてみるというものです。例えば、「家族が旅行に行く間、施設で過ごしてみる」などという形で試すことができます。ショートステイでは、実際の施設生活を体験できるので、施設に対する理解を深めることができます。
これらの試行を通じて、高齢者は自分のペースで施設生活に慣れていき、次第に施設での生活に移行することができると思います。
4.生活スタイルや趣味を維持する
高齢者が普段楽しんでいる活動や趣味は、その人の生活の質を高め、心の安定にも繋がります。だからこそ、これらの活動を尊重し、施設でも続けられるようにすることが大切です。
たとえば、庭いじりが趣味であれば、「施設には庭があり、自分で花や野菜を育てることができるよ。一緒に新しい花の種を選びに行こうか?」と提案するといいでしょう。また、お母さんが読書が好きであれば、「施設には図書コーナーがあり、新しい本もたくさんあるよ。好きなときに読むことができるんだよ」と説明します。
また、ペットとの生活を重視する高齢者に対しては、ペット可の施設を選ぶなど、そのニーズに合わせた選択をすることが重要です。「この施設なら、愛犬と一緒に生活できるんだよ。毎日の散歩はスタッフが手伝ってくれるから、安心してね」と伝えると良いでしょう。
このように、高齢者の趣味や生活スタイルを理解し、それを尊重することで、施設生活への抵抗感を減らすことができます。
5.専門家と信頼できる第三者に協力してもらう
なかなか、家族の声に耳を傾けない高齢者でも、普段から接している主治医やケアマネージャーの意見なら聞いてくれる高齢者もいます。
たとえば、本人が認知症の初期症状を示しているとすれば、医師にその状態を評価してもらい、施設の必要性を本人に話して貰います。また、ケアマネージャーには、自分が自宅で生活を続ける事での危険性や、施設に入居した時のメリットについて、専門家の立場から具体的に説明してもらいます。
また、親しい友人などが介入し、施設入所の良さをアピールする事も良いでしょう。たとえば、「山田さん(共通の友人)も最近、施設に入居したんだ。彼はそこで新しい友達をたくさん作って、毎日楽しそうに過ごしているよ」と伝えると、高齢者の抵抗感が薄れるかもしれません。
一番大事なことは、施設の入所が「本人の安全や今後の生活を楽しむため」に考えている事を分かってもらう事だと思います。そのためにも、焦らずに1つ1つ、本人の不安や疑問を解決していってあげましょう。
もう少し、自宅で介護を続けるのであれば・・
それでも、本人が納得しない。または、もう少し自宅での介護を続けてみよかなと思う時は、しっかりとサービスを使うべきでしょう。しかし、ここで詳細まで書くと、かなり長くなってしまうため、自分が考える代表的な物を、簡単な説明と一緒に紹介しようと思います。
公的な支援制度を使う
要介護認定を受けて、必要な介護サービスの費用を補助してもらえます。
家族の介護をするために、一時的に仕事を休める制度です。
介護サービスに関する情報提供や相談が出来ます。
生活支援や具体的な介護サービスを使う
専門スタッフが、自宅を訪れ介護・看護サービスを行ってくれます。
短期間の施設入所を行う事で、家族の介護負担が軽減されます。
自宅で生活しながら、昼間は施設へ通います。入浴や食事サービス、リハビリが受けられます。
介護保険制度を利用し、介護用品のレンタルや住宅改修の一部を補助して貰えます。
高齢者のための特別な食事を自宅に配達します。
家事や買い物、送迎など、日常生活を支えるサービスです。
上記は、ほんの一部です。ケアマネージャーなどに相談し、ニーズにあったサービスを見つけましょう。
まとめ
施設で働いていると、「入所して欲しいと思う家族」と「望まない高齢者」の話は何度も聞きます。お互いの考えには、根拠があり納得が出来る事が多いです。だからこそ、お互いに相手の考えをしっかりと受け止め、考える必要があるのかなと思います。認知症があれば、それが難しい時もありますが、自分の記事が、そのお手伝いが少しでも出来たらうれしいなと思います。
最後に、この記事を読んでいただき、ありがとうございました。